BL好き男子=腐男子の禁断の世界! 座談会[女人禁制!?腐男子ネットワーク]by“腐男子”吉本たいまつ with 腐男子ライター

乙女ゲーム、ミュージカル、戦国、BL…最近、乙女系の作品はとても充実し、それを楽しむ女性も増えています。そんな中で、BLなどの乙女系作品を楽しみ、男×男の関係を妄想して楽しむ男性…「腐男子」も、着実に増えてきています。いったい「腐男子」って、どういう人たちなんでしょうか?
どんな楽しみ方をして、どんな萌えを持っているのでしょうか?
『腐男子ネットワーク』では、自らも腐男子である吉本たいまつが、「腐男子」の謎に迫ります!

10.11.11

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(前回のあらすじ)
少年マンガ、少女マンガ、アニメに加えて、BLも楽しむようになったluk5さん。最近は「電波を受信する」作品を楽しんでいるというのですが…?

  • 電波を受信?
  • BLって特別?
  • お話をうかがってみて

電波を受信?

  • で…電波ですか?
  • 確かにBLは直接萌えがあるのですが、BLじゃない作品からも、びびっと萌えを感じる時があります。それを「電波を受信する」と言っています。
  • たとえばどんな時ですか?
  • お互い違う立場にいるけれど、相手に強い執着を感じていたり、希望や光を感じていたりするような時ですね。いい例が、椎名高志先生作『絶対可憐チルドレン』*1皆本と兵部です。
  • エスパーの兵部は辛い過去を持っていて、皆本に対して「どうせ人間は辛い仕打ちを繰り返すに違いない」という、憎しみに近い感情を抱いています。ですが、それを「繰り返してほしくない」とも思っていますし、そうなることが自分の救いになることも感じ取っています。一方、普通の人間である皆本にとって、エスパーだけの世界を作ろうとする兵部は、阻止しなければいけない敵です。ですが時には、皆本が面倒を見ている三人組エスパーの助けにもなる存在です。二人は立場としては敵味方ですが、信頼にも似た、深いつながりがあるんです。
  • 私もアニメで見ていましたが、二人の間には、一口で「敵同士」とは言い切れない、強い執着がありますよね。そんな二人の間には…。妄想が広がりますね!!
  • そうですね(笑)。あと新井隆広先生の『ARAGO』*2や、田辺イエロウ先生の『結界師』*3も、「電波を受信する」ことが多い作品です。
  • 少年誌以外ではいかがですか?
  • 女の子同士の関係を描いた作品も楽しんでいます。すごく緊密な関係が描かれたりするじゃないですか。たとえば、矢直ちなみ先生の『一緒にかえろう』*4とか。活発な女の子が、内気な女の子に常に世話を焼いたり、行動をいつも気にしたりしますよね。それは相手に強く執着しているのと変わらないと思っています。それって、BLの萌えにかなり近いですよね。
  • あの作品はいいですよね。友情より強い絆ですし、かといって「恋愛感情」とも違いますし。では、女性同士の恋愛を描いた「百合」作品もお好きなんでしょうか?
  • 「百合だから」という理由で読むことはないです。ただ百合じゃなくても、そういう作品はたくさんありますから(笑)。
  • なるほど。BLの萌えの根っこにあるのも、これらの「強い思い」なんでしょうね。そしてBLじゃない作品から二次創作が生まれてくるのは、そこから「電波を受信」して、萌えを感じるからなんでしょうね。
  • 確かに、オリジナルBLも好きなんですよね。日の出ハイム先生の『ファーラウェー』とか、たうみまゆ先生の『隅田川心中』とか。特に『隅田川』には、「言葉にしても言葉にしても言い足りない思い」というフレーズがあって、その思いの強さにキュンときます(笑)。ただ、どちらかというと二次創作の方が、自分にとってなじみがあるかな、と思います。

BLって特別?

  • そうなると、あらためてうかがいたいのですが、幅広いジャンルのマンガを読んでいらっしゃる中で、BLは他のマンガと違うと思いますか?
  • 確かにBLマンガには、他のマンガとは違った面があると思います。一番の違いは、性的な描写が重要な役割を持っていることでしょうね。ですが恋愛を描くという点では、少女マンガの延長線上にあると思います。もともと少女マンガを読んでいたということもあるんですが、恋愛のときめきや萌えを描くという点では、そんなに変わらないと思うんです。
  • なるほど。BLが女性だけでなく男性にも訴えるのは、そのあたりに理由がありそうですね。
  • それに最近は、BLとそうでない作品の境界も崩れてきていますよね。岩本ナオ先生の『雨無村役場産業課兼観光係』みたいに、一般誌で男性同士の恋愛を描く作品が出てきましたし。
  • 西炯子先生の『ひらひらひゅ〜ん』もそうでした。
  • ですから「BLじゃなくちゃ萌えられない」ってことはないと思うんです。その意味では、BLは特別なものではないと思います。実際私も、BLも少年マンガも少女マンガも、同じように読んでいますから。
  • ということは、「電波を受信」できれば、どこにでも萌えが転がっているということですよね。
  • ええ。
  • アンテナの感度を高めていくと、萌えの範囲が広がるんですね。これはアンテナを磨いて、日々感度を高めていかないと(笑)。本日はどうも、ありがとうございました!

お話をうかがってみて

     大切なのは、「電波を受信する力」=「妄想する力」だと思いましたね。BLは、男同士のラブを直接描いた作品ですが、むしろ「直接描いていない」からこそ、妄想の翼をどこまでも広げることができ、強く萌える作品もあるわけです。そして、そうした作品は、それこそどこにでもあるわけです。マンガにも、小説にも、テレビドラマにも、現実世界にも。思えばコミケなどでの二次創作は、そうした妄想が爆発した結果、これだけ盛り上がるのではないでしょうか。オリジナルのBLと、原作があることが前提になっている二次創作。BLの楽しみは、この二つの強力なエンジンが動かしているんだなと、あらためて思いましたね!
  • *1 『絶対可憐チルドレン』…週刊少年サンデー連載中。略して『絶チル』とも。日本最強のエスパー三人組(薫、葵、紫穂)を擁し、エスパーと普通の人の共存を目指す国家組織・バベルと、エスパーだけの世界を作ろうとする組織・パンドラとの戦いを描く。皆本はエスパー三人組の担当者で、彼女らの上司であり、教師であり、彼女たちの暴走を止める役でもある。一方、兵部はパンドラの現リーダーであり、薫が次世代のパンドラのリーダーになり、人類との最終戦争の先頭に立つという予知を成就させようとする。エスパーを悪のために使おうとする第三勢力「黒い幽霊」が活動する際には、バベルとパンドラは共闘することもある。
  • *2 『ARAGO』…週刊少年サンデー連載中。連続殺人鬼に両親を殺されたアラゴ。双子の兄を失う代わりに復讐を果たすが、兄の腕と不思議な力を受け継ぐ。警官になったアラゴは、特殊犯罪捜査班の一員となり、ロンドンに現れる怪異と戦う。
  • *3 『結界師』…週刊少年サンデー連載中。妖の生まれる土地・烏森を封印するため、また幼なじみを守るため、強くなろうとする結界師見習い・墨村良守の成長を描く。
  • *4 『一緒にかえろう』…まんがタイムファミリー連載中。小学生の頃、春はボーイッシュだった詩緒に一目惚れ。その後、高校生になって再会すると、詩緒は女性的な外見で、とても引っ込み思案になっていた。詩緒をなんとかクラスに溶け込ませようと、春はなにかと世話を焼く。
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吉本たいまつ
(よしもと・たいまつ)
ブログ「一日一やおい」運営。「ぱふ」 コミックスレビュー執筆、ユリイカ臨時増刊「腐女子マンガ大系」 「BLスタディーズ」 に寄稿。専門はおたく文化史研究で、現在おたく文化の成立と成長を調べた単行本を執筆中。
セクシュアリティは今のところヘテロ。
妻あり、娘あり。


『おたくの起源』
(NTT出版ライブラリーレゾナント)

「腐女子マンガ大系」

ユリイカ2007年6月
臨時増刊号
「腐女子マンガ大系」

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